わかったつもり 読解力がつかない本当の原因
「わかったつもり 読解力がつかない本当の原因」を読了。
読解力って何?「わかったつもり」から、より深く読むにはどうすればいいの?っていうことについてまとめられた本。
「AI vs 教科書の読めない子どもたち」で読解力に興味を持った私ですが、「AI vs 教科書の読めない子どもたち」では、読解力を養うために何が有効なのかを解明する科学的な研究はないとのことでした。とはいえ、子どもの人生を左右すると述べられている読解力。なんとかヒントだけでも!と思って本書を手に取りました。
本書はタイトル通り「読解力」についての本。こういう本はありそうでなかったのか、単に私が興味がなくて気付かなかっただけなのか。「読んでわかる」とはどういうことなのかをとてもロジカルに解説してくれる。AIが最も苦手とする分野である「読解」。「読む」っていう行為は、それだけ人間的な感性が必要そうなイメージだけど、この本の解説を読んで、こんなにロジカルな現象だったのか!とびっくり。
もちろん、ロジカルなだけじゃなくて、人間的なものが必要になる。
それがスキーマ。ある物事に対するひとまとまりの知識のことを言うらしい。文章を理解するにはこのスキーマが必要らしい。
例えば、
「サリーがアイロンをかけたので、シャツはきれいだった。」
この例文が理解できるのは、「アイロン」がどういうものかを知っているからだ。アイロンに対する知識(スキーマ)を持っているからだ。さて、ここで思いあたる。これは幼児の世界だ!と。職業柄、いつも幼稚園の先生視点での感想で申し訳ないんだけど、これは言葉を獲得している最中の子どものことだなと思った。幼児期に身の回りの経験値を高めることの重要性がここにある。こうした知識の積み重ねで世界を知り、会話も理解できるようになるのだから、子どもにはとにかく豊かで多様な経験をつませることが大事。それらの経験が土台となってほかの物事を理解したり、より深く文章をも理解できるようになるのだ。でも別に特別なことをしてっていうんじゃなくて、近所の人と関わったり、親戚の赤ちゃんと触れ合ったりするだけでも、職業や年齢・世代の違う人々という「関わる人の多様性」を増やすことができる。豊かな経験値を積むチャンスなんて日常のなかでいくらでもある。家事も通園途中にも、ご飯を食べる時だって、日常の中でスキーマをどんどん積んでいくチャンスはごろごろ転がってるんだ。
と、話はずれてしまったけれど、とりあえず、文章を理解するには自分の中にその対象関連の知識が必要とされる。逆に言えば、いくら文法が理解できても、自分の中にスキーマがなくては、文を理解することはできないということ。ちなみにスキーマによって誤読することもある。
「読解」に必要な要素はまだある。それは本書を読んでお楽しみ下さい。「読解」って、自分の中に持っているものによって、理解が深まったり、誤って理解したり…となんとも人間らしさを感じる能力である一方、とてもロジカルでもあり、フィーリングで国語の問題は解いちゃいけないんだなと思いました(笑) つくづく「読解」っておもしろい行為だなと思わせてくれる本でした。
学生時代、極軽度のアスペルガーかな?という知人がいた。彼は国語がダントツで得意な人だった。ちなみに現実世界ではあまり空気の読めるタイプではない。でも文章はものすごく読めるのだ。今思えば、極々軽度であるからこそ、文脈も理解することができ、かつアスペらしいロジカルさで問題を解いていたのかな?と。要は読解的にはバランスの良い資質を持った人だったのかも。
わかったつもり?読解力がつかない本当の原因? (光文社新書)
- 作者: 西林克彦
- 出版社/メーカー: 光文社
- 発売日: 2013/12/13
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