山羊座10度

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日本の15歳はなぜ学力が高いのか

随分日本の読者を意識した邦題だけど、原題は「Cleverlands: The secrets behind the success of the world's education superpowers」

イギリス人教師がPISA上位国(地域)であるフィンランド、上海、日本、シンガポール、カナダをプライベートに訪問し、ネットで見つけたそこの国の教師に泊めてもらいながら、リアルな子供の姿と教育システムについて考察する本。別に日本の教育システムを賞賛する本ではない。

 

変に軽くてキャッチーな邦題の割には、しっかりした内容。日本の教育の歴史や東アジアの文化的背景についてもよく調べられている。

日本人読者が気になるにはやっぱり日本の章だと思う。日本の教育について海外の視点から見ると意外と日本人が気にしているポイントと違うのかも?と思われるところもいくつか。

 

日本の児童生徒に対して「創造性がないよね」っていうのは随分馴染み深い指摘となっているけど、「言われてみれば」という海外の視点としては、「日本の教育は集団の中で生きることを前提としている」ということ。別にそれ自体はいいと思うんだけど、それが行き過ぎると「ロボットでも作りたいの?」って言う感じになる。あとイジメ。教師が直接的に注意するんじゃなくて、まだ「黄色班は終わってませんね」なんて言って、同じ班の子にサボってる子を咎めさせる。こういうのが周りと違った子を排除する考えやいじめに繋がるんだなって思った。

 

良きフォロワーになるために、誰もが一度は委員長的なことをするってのは必要だと思う。でもねえ、集団行動も行き過ぎると気持ち悪いよ。もちろんチームワークは必要だけどさ、でもルールがあってのチームワークよりも、ルールをみんなで作るチームワークじゃない?ルールありきなのが、なんかしんどい、日本の学校って。まーほかの国の学校はよくわからないけど。

 

反対に日本の教育システムの良いところとして、教師の質・制度やアクティブラーニングやゆとりについて書かれているけど、評価されている部分が日本人の私にとっては当たり前すぎて、むしろ海外の教育システムってこんなにも整っていないものなんだ…とちょっとびっくり。

 

上海やシンガポールは日本と似てるところがあるとして、フィンランド、カナダは興味深い。特にカナダね。バランスがいい。子どもがなんか楽しそう。先生も向上心を保てそうな制度。

 

日本が見習うべきところは、フィンランドとかカナダとかかな?特にカナダは移民国家(本当は日本も結構な移民国家なんだけど)。その中で生きていく力を身につけてようと考えられたシステムが素晴らしい。これからの多国籍化に伴って、日本人集団だけでやっていく能力だけじゃなくて、さまざまなバックグラウンドの持ち主地のチームワーク構築が大事だと思う。そういうチームあっての、ルールづくり。ルールありきじゃなくて。変化の激しい時代を生きるなら、未知の分野で「自分とは違う人」と何かをやっていく力。だからこそ、移民国家のカナダに見習うべきなんだと思う。

 

とはいえ、この本の良いところはどの教育にも利点と問題点を示しているところ。教育に絶対的な正解はない。でもその中でベストな教育を探っていくのは楽しい。だって、子ども達は常に可能性に溢れてるから。それを活かす方法を探してるんだと思うとワクワクする。

 

日本の15歳はなぜ学力が高いのか?:5つの教育大国に学ぶ成功の秘密

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Cleverlands: The Secrets Behind the Success of the World's Education Superpowers

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