山羊座10度

ノンフィクション中心の読書好き

やわらかな遺伝子

 やわらかな遺伝子 (ハヤカワ・ノンフィクション文庫)

うーん、おもしろかった。

と言いつつ、読み切るのにすんごい時間かかっちゃったんだけど。

 

「生まれか育ちか」の問いに対して、膨大な研究データを使って、「生まれは育ちを通して表れる」という考えを示したノンフィクション。

 

よく教育系の本を読んでいると、遺伝と環境が人の人格や能力に与える影響は半々だと書かれていて、なんとなく「ふーん」だなんて思ってたんだけど、どういう意味かあまり考えてなかった。

この本によると、遺伝子の影響というのは確実にあるものの、環境によって遺伝子が反応するんだとか。

そして、ある一定以上の愛情を注いで育てれば、ものすごく愛情を注いで育てても能力的に対して変わらないという。なんとまあ。

 

「生まれか育ちか」論争の歴史やそれに付随する哲学的問題など、単純に物語として楽しい。

 

なんとなく感じていたことで、この本でも言及されていたこととしては、「育ち」の平等化によって、「生まれ(遺伝的要素)」の不平等化が起こるということ。例えば、どんな境遇の人でも学校へ行けるようになったら、もともと頭のいい人の優秀さが明確になるってこと。そして逆に遺伝的に勉強が得意じゃ無い人はあからさまに落ちこぼれるってこと。まあそうだよね。

 

あとおもしろいと思ったのは、生まれた時点では小さな差異だったことが、自分自身で環境を考慮しながら大きな差異にしていくということ。例えば、双子の片方が社交的だったら、もう片方はあえて内向的な立ち位置をとるようになる等。

これは経験ある。私は双子じゃ無いけど、小さい時は兄が優等生の「いい子ちゃん」だったから、私は「いい子ちゃん」じゃなくていいと思って好き放題やってた。

だけど、兄が思春期になって荒れだしたあたりから、「あー私がいい子の役をやんなきゃ」って落ちこぼれ→優等生に変貌したんだった。なんとなく今もその役を引きずってる。いい子ちゃん的素質も好き放題の素質も持ってたんだと思う。

 

さて、本書を読み終えて思うのは、周りの大人が本当にできることっていうのは、子どもの可能性を開花させる環境を用意してあげることなのかなと思う。

あとは、子どもの素質を見極めること。

でも、子どもの頃っていうのは、大人に比べて限られた経験しかしてないから、周りの大人の影響が如実に現れる。

(本当に自分らしく生きられるのは、十分な人生経験をして、躾ける親や先生がいなくなってから。)

何が大人の影響なのか、その子の素質なのかを見極めるのは難しいと思う。

だから、多様な経験をさせて、どの経験や環境がその子の遺伝子を活性化させるのか見つけるのと、もう1つは子どもに多くの「アウトプット」をさせることで、その子も好みの方向性を探すことだと思う。

絵、文章、言葉、スポーツ、作品、疑問や感想。

同じアウトプットにしても「個性、方向性、好み」ってのが出てくる。

それを観察すること。観察しやすい状況を用意すること。

「個性を活かす」ってそういうことなのかしらーと考えさせられた1冊でした。

 

 

やわらかな遺伝子 (ハヤカワ・ノンフィクション文庫)

やわらかな遺伝子 (ハヤカワ・ノンフィクション文庫)

 

 

 

やわらかな遺伝子

やわらかな遺伝子