山羊座10度

ノンフィクション中心の読書好き

わかったつもり 読解力がつかない本当の原因

「わかったつもり 読解力がつかない本当の原因」を読了。

読解力って何?「わかったつもり」から、より深く読むにはどうすればいいの?っていうことについてまとめられた本。

 

「AI vs 教科書の読めない子どもたち」で読解力に興味を持った私ですが、「AI vs 教科書の読めない子どもたち」では、読解力を養うために何が有効なのかを解明する科学的な研究はないとのことでした。とはいえ、子どもの人生を左右すると述べられている読解力。なんとかヒントだけでも!と思って本書を手に取りました。

 

本書はタイトル通り「読解力」についての本。こういう本はありそうでなかったのか、単に私が興味がなくて気付かなかっただけなのか。「読んでわかる」とはどういうことなのかをとてもロジカルに解説してくれる。AIが最も苦手とする分野である「読解」。「読む」っていう行為は、それだけ人間的な感性が必要そうなイメージだけど、この本の解説を読んで、こんなにロジカルな現象だったのか!とびっくり。

 

もちろん、ロジカルなだけじゃなくて、人間的なものが必要になる。

それがスキーマ。ある物事に対するひとまとまりの知識のことを言うらしい。文章を理解するにはこのスキーマが必要らしい。

 

例えば、

「サリーがアイロンをかけたので、シャツはきれいだった。」

 

この例文が理解できるのは、「アイロン」がどういうものかを知っているからだ。アイロンに対する知識(スキーマ)を持っているからだ。さて、ここで思いあたる。これは幼児の世界だ!と。職業柄、いつも幼稚園の先生視点での感想で申し訳ないんだけど、これは言葉を獲得している最中の子どものことだなと思った。幼児期に身の回りの経験値を高めることの重要性がここにある。こうした知識の積み重ねで世界を知り、会話も理解できるようになるのだから、子どもにはとにかく豊かで多様な経験をつませることが大事。それらの経験が土台となってほかの物事を理解したり、より深く文章をも理解できるようになるのだ。でも別に特別なことをしてっていうんじゃなくて、近所の人と関わったり、親戚の赤ちゃんと触れ合ったりするだけでも、職業や年齢・世代の違う人々という「関わる人の多様性」を増やすことができる。豊かな経験値を積むチャンスなんて日常のなかでいくらでもある。家事も通園途中にも、ご飯を食べる時だって、日常の中でスキーマをどんどん積んでいくチャンスはごろごろ転がってるんだ。

 

と、話はずれてしまったけれど、とりあえず、文章を理解するには自分の中にその対象関連の知識が必要とされる。逆に言えば、いくら文法が理解できても、自分の中にスキーマがなくては、文を理解することはできないということ。ちなみにスキーマによって誤読することもある。

 

「読解」に必要な要素はまだある。それは本書を読んでお楽しみ下さい。「読解」って、自分の中に持っているものによって、理解が深まったり、誤って理解したり…となんとも人間らしさを感じる能力である一方、とてもロジカルでもあり、フィーリングで国語の問題は解いちゃいけないんだなと思いました(笑) つくづく「読解」っておもしろい行為だなと思わせてくれる本でした。

 

学生時代、極軽度のアスペルガーかな?という知人がいた。彼は国語がダントツで得意な人だった。ちなみに現実世界ではあまり空気の読めるタイプではない。でも文章はものすごく読めるのだ。今思えば、極々軽度であるからこそ、文脈も理解することができ、かつアスペらしいロジカルさで問題を解いていたのかな?と。要は読解的にはバランスの良い資質を持った人だったのかも。

 

わかったつもり?読解力がつかない本当の原因? (光文社新書)

わかったつもり?読解力がつかない本当の原因? (光文社新書)

 

 

 

AI vs. 教科書が読めない子どもたち

AI vs. 教科書が読めない子どもたち

 

 




 

 

日本の15歳はなぜ学力が高いのか

随分日本の読者を意識した邦題だけど、原題は「Cleverlands: The secrets behind the success of the world's education superpowers」

イギリス人教師がPISA上位国(地域)であるフィンランド、上海、日本、シンガポール、カナダをプライベートに訪問し、ネットで見つけたそこの国の教師に泊めてもらいながら、リアルな子供の姿と教育システムについて考察する本。別に日本の教育システムを賞賛する本ではない。

 

変に軽くてキャッチーな邦題の割には、しっかりした内容。日本の教育の歴史や東アジアの文化的背景についてもよく調べられている。

日本人読者が気になるにはやっぱり日本の章だと思う。日本の教育について海外の視点から見ると意外と日本人が気にしているポイントと違うのかも?と思われるところもいくつか。

 

日本の児童生徒に対して「創造性がないよね」っていうのは随分馴染み深い指摘となっているけど、「言われてみれば」という海外の視点としては、「日本の教育は集団の中で生きることを前提としている」ということ。別にそれ自体はいいと思うんだけど、それが行き過ぎると「ロボットでも作りたいの?」って言う感じになる。あとイジメ。教師が直接的に注意するんじゃなくて、まだ「黄色班は終わってませんね」なんて言って、同じ班の子にサボってる子を咎めさせる。こういうのが周りと違った子を排除する考えやいじめに繋がるんだなって思った。

 

良きフォロワーになるために、誰もが一度は委員長的なことをするってのは必要だと思う。でもねえ、集団行動も行き過ぎると気持ち悪いよ。もちろんチームワークは必要だけどさ、でもルールがあってのチームワークよりも、ルールをみんなで作るチームワークじゃない?ルールありきなのが、なんかしんどい、日本の学校って。まーほかの国の学校はよくわからないけど。

 

反対に日本の教育システムの良いところとして、教師の質・制度やアクティブラーニングやゆとりについて書かれているけど、評価されている部分が日本人の私にとっては当たり前すぎて、むしろ海外の教育システムってこんなにも整っていないものなんだ…とちょっとびっくり。

 

上海やシンガポールは日本と似てるところがあるとして、フィンランド、カナダは興味深い。特にカナダね。バランスがいい。子どもがなんか楽しそう。先生も向上心を保てそうな制度。

 

日本が見習うべきところは、フィンランドとかカナダとかかな?特にカナダは移民国家(本当は日本も結構な移民国家なんだけど)。その中で生きていく力を身につけてようと考えられたシステムが素晴らしい。これからの多国籍化に伴って、日本人集団だけでやっていく能力だけじゃなくて、さまざまなバックグラウンドの持ち主地のチームワーク構築が大事だと思う。そういうチームあっての、ルールづくり。ルールありきじゃなくて。変化の激しい時代を生きるなら、未知の分野で「自分とは違う人」と何かをやっていく力。だからこそ、移民国家のカナダに見習うべきなんだと思う。

 

とはいえ、この本の良いところはどの教育にも利点と問題点を示しているところ。教育に絶対的な正解はない。でもその中でベストな教育を探っていくのは楽しい。だって、子ども達は常に可能性に溢れてるから。それを活かす方法を探してるんだと思うとワクワクする。

 

日本の15歳はなぜ学力が高いのか?:5つの教育大国に学ぶ成功の秘密

日本の15歳はなぜ学力が高いのか?:5つの教育大国に学ぶ成功の秘密

 

 

 

 

Cleverlands: The Secrets Behind the Success of the World's Education Superpowers

Cleverlands: The Secrets Behind the Success of the World's Education Superpowers

 

 



パパは脳科学者

脳研究者である著者が、研究者らしい視点を織り交ぜつつ、愛情たっぷりに我が子の成長を綴るエッセイ。ただの育児エッセイではなく、今子どもに何が起こっているのか、という解説がそれはもう勉強になる。なおかつ、文章から溢れ出る子どもへの愛情を感じるという、今までにない本だと思う。

 

著者は東京大学大学院薬学系研究科・薬学部の教授。タイトルの通り「脳研究者」であり、薬剤師でもあるらしい。2018年時点で47歳だが、随分と童顔で30代半ばくらいにしか見えない。

 

そんな著者が結婚11年目にして子どもを授かる。この頃の子どもの脳はこうなっていて、こんな風に世界を認識している、という脳研究者の視点での解説が非常に興味深い。「自分もかつてそうやって成長してきたのか」というのと「今子どもにはこんな風に世界が見えているのか」と2つの意味で感慨深くなる。それは読者に新しい視点を与え、子どもの何気ない行動の見方が変わる。

 

例えば、子どもが数字を言えるようになった。1の次は2、2の次は3、3の次は4…というのを理解するには、頭の中の「視点の移動」が必要だという。これが発達することによって、明日の次の明後日、明後日の次の日、その次の日…と無限の不思議さにつながり、「この道をまっすぐ進むとどうなるんだろう」「宇宙の果てはどうなっているんだろう」「お金を使い続けるとどうなるんだろう」という先を見通す力となっていくと言う。

 

ところが、表面上では「数字を言えるようになった」だけである。この本が面白いのは、その背景にどんな可能性を秘めているのかを教えてくれて、それにワクワクするからだと思う。確実に将来へと「繋がっている」。それが我が子への愛情、そして時折見られる著者の親バカっぷりと合わさって表現されるので、なんとも微笑ましく感銘を与えてくれるのだ。

 

自分の成長を振り返ったり、現在子育て中の子への新たな視点を手に入れたり、妊娠中の人がワクワクしたり、子育てを終えた人が「あーこういうことだったんだな」と思ったり、割と誰でも楽しめる内容だと思う。でもオススメはやっぱりこれから子どもを持つ人、現在子育て中の人かな。あ、でも旦那さんに不満を抱えている人は、著者のイクメンっぷりと旦那さんを比べて落ち込むかもしれないから、気をつけたほうがいいかもしれない(笑)

 

パパは脳研究者 子どもを育てる脳科学

パパは脳研究者 子どもを育てる脳科学

 

 

 

 

「マーケット感覚を身につけよう」

 

おちゃらけ社会派ブロガーちきりんさんの「マーケット感覚を身につけよう」を読みました。

マーケット感覚とは「人が価値をおくものを見出す力」のこと。その力がこれからの時代に必要になってくるよー、「市場」で磨いていきましょうねーという話。市場主義的なちきりんさんらしい内容です。

 

「価値」を考えるためにはコトラーの「全ての事業はサービス業である」という言葉を思い出すとわかりやすいと思う。(確かコトラーだったと思うんだけど)

例えば、メルセデスベンツは車を売っているのではなく、「高級な車を持っている自分」を味わえる権利を売っている。「滑らかな走り心地」とか言うこともできるかもしれない。(例に出しといてなんだけど、あんまりメルセデスベンツに詳しくないんでなんとも笑)

ものやサービスを売り買いしているように見えて、実際は何を買ってるのか、何を売っているのかというものがわかるようになろう!という話です。

 

例が豊富でとてもわかりやすく、大学生や社会人1、2年目のmoshiだったら、こんな社会は楽しそう!とワクワクしながら読んでたと思う。が、しかし、マーケットとはその名の通り、「市場」である。自分の持っているものの需要を考えて、磨いて売る。確かにサービスの質は良くなるんだろうけど、競争に疲れた身としてはもっとのんべんだらりと過ごしたいなーとも思う(笑)

 

でもそんなのは通用しないんだろうなーというのはよくわかる。マーケット感覚は必要。マーケット感覚の磨き方についても書いてあるけど、そうだよねーと頷きながら読みました。

あーでも磨かなくていいなら磨きたくない(笑)でもそれじゃあ淘汰されちゃう。結局「何があっても大丈夫と思える自分」になることが最強なんだけど、その中にはこの「マーケット感覚を持つ」ということも含まれるのでしょう。

子どもには是非身につけて欲しい感覚です。でも親がこれじゃダメだろうな笑

 

 

 

 

書くことについて書く

昔から文章を書くのが好きな人というのがいる。

私はそういうタイプではない。授業の終わりに感想を書けと言われて何も書けない人だ。

むしろ、「書く」だけじゃなく、コメントも苦手。ああいうのが上手な人の思考回路を見て見たいもんだ。

 

それでも高校生の時、「書く」ということにおいて、唯一これは得意?と思われるものがあった。

それは小論文。何故だかああいう字数制限があって、論理を展開していく文章を作るのが好きだった。

そういえば、数学の「証明」も好きだったな。その感覚に近い。そういえば、小学校の時、「ディベート」も好きだったな。その感覚にも近い。何かを説明するのが好きなんだろうか。気分が乗った時は、やたらプレゼンが上手だと言われる。普段は無茶苦茶下手なのに。

 

論理的なのかと言われれば、そうでもない気がする。そういうの好きだけど。

多分、感情を強く動かされたものに対して、理屈をくっつけるのが好きなんだろうな。そして、みんなにもそれを理解してもらいたいと思うから、さらに熱が入る。数学の「証明」に心動かされたかは知らないけど。

 

最近はレポートを書くのが楽しくなってきた。自分の言葉にするって楽しいよね。取り入れる時よりも、言葉にしているときのほうが、自分のものにできてる気分。

 

普段自分の感じていることを言葉にしてくのもいいんだけど、そうすると内面さらけ出しすぎて、結構恥ずかしい。ということで、趣味の本についての感想を書いていこうかなと思う。たまには、映画とかの感想も書くかも。

 

私はそんなに友達がいない。というか、読書好きな友達があまりいない。そして、私の読む本も結構マニアックだったりする。だから、読んだ本が楽しくっても、あんまり話す相手がいないんだよね。寂しい。ここで思う存分、本について語りたいな、と思って、ブログを立ち上げてみました。

 

アウトプット慣れしてないから、読みづらいかもしれないけど、そのうち上手な文章が書けるようにコツコツ頑張ります。