山羊座10度

ノンフィクション中心の読書好き

深い河

インドにて再読。

今これ書いてるのもインドだ。

なんでインドにこの本を持って行ったかというと、インドにまつわる話だからだ。

もうちょっと詳しくいうとそれぞれの背景や思い、目的を持ってインドツアーに参加する老若男女のお話。

 

亡くなった妻の生まれ変わりを探しに、大学時代の知り合いを探しに、写真を撮るために、亡くなった戦友を弔うために、自分を救ってくれた鳥に恩返しをするために、インドへ向かう。

 

著者はリヨン大学にてキリスト教を学んでいたらしい。そして登場人物のひとり、大津は神父を目指す「キリスト教信者」。でも考えは非常に東洋的。何に神を見出すのか。善悪割り切れない混沌とした世界観がまさに東洋的だし、それを象徴する最たるものがガンジス川なのだと思う。哀しみも苦しみも、不浄さも身分も年齢も全てを受け入れ、流れていくガンジス川。私も今ガンジス川のある街に滞在してこの感想を書いているが、この街のガンジス川は上流の為、山・霧に囲まれ、流れも早く、きっと、腰まで入ったら普通に流されて死ぬ。バラナシ地点のガンジス川よりよっぽど綺麗だとは思うが、溺れそうだから、私は足首すら入れられない。全てを受け入れる河というよりは、ちょっと厳しめで、容易には近寄りがたい神聖さがある。それが流れに流れて、下流の方のバラナシになると、ガンジス川はきっともっと俗っぽくなるんだろうと思う。でも、あまりにも俗っぽくて人間らしく、生々しい欲や哀しみを膨大に受け入れるのがバラナシのガンジス川のイメージ。そして、それら全て受け入れるからこそ、懐のとんでもなく深い聖なる河なんだろう。まさに無条件の愛、母なるガンジス川

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バラナシのガンジス川

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上流のガンジス川。命がけの沐浴。すごく寒くて水も冷たい。

 

みんないい話なんだけど、個人的に一番印象的なのは愛を模索する美津子の話。「え、これって私の話?」ってくらい彼女の思考回路と半生が似てる…大津を痛ぶるのも、愛の真似事をするのも、結婚生活も、彼女の気持ちが痛いほどわかりすぎて、読むのが苦しかった…えぐってくれるわ、この本。痛い。

 

私にとっては、この本は読んで決して晴れやかな気持ちになるものではないんだけど、読んでいると、目を背けていたものに対して、「ほら、ちゃんと見なきゃダメだよ!」って言われている気分になる。きっとまたインドに来るようなことがあれば、ズーンとなりながらまた読み返すんだろうな…たぶん。

 

 

 

深い河 (講談社文庫)

深い河 (講談社文庫)